とつげきチョッキ

攻撃的になる チョッキ。 持たせると 特防が あがるが 変化技を だせなくなる。

素数の地獄に音楽は絶えない

ある感覚が別の感覚を惹起することを共感覚という。共感覚は何かに利用できないだろうか。例えば素数暗記のために。昔バイトしていた塾に0から9までの数字一つ一つに色が対応しているという子がいたが、それを年号暗記に活用するようなことはなかった。情報はやたらと繋がらない方が良いということもある。数字と色を対応させることの応用は僕には思いつかない。
 
もりしーは8121086131210xを音で覚えているらしい*1。これは共感覚だ、と僕は思った。人のもつ多くの知能の中でも、音楽は特に不思議である。素数暗記に音楽を応用できると直観するのに、これは十分すぎるエピソードだった。
 
ピアノを習うと、五本の指には親指から順に1から5までの指番号という番号付けがあることを学ぶ。楽譜には指番号が書いており、その通り演奏すれば概ね正しい運指となる。指番号は指から自然数への写像である。音楽の勉強は写像の勉強であり、ピアノを習っていた人は既に写像を知っている。しかし、指番号通りに演奏しないこともあるし、指番号だけがわかっていても音楽は構成されないだろう。この写像素数暗記に応用されないが、音楽には他にも、「数への写像」がありそうである。
 
もっと僕の興味を惹く写像として、音楽には「度数」というものがある。これは音と音の間隔(ピアノの白鍵で数えて)に応じた自然数である。例えばドとドは1度、ドとレは2度と数える*2。ドを基準、つまり1に対応すると決めると、以降の鍵盤に対応する自然数も度数に応じて帰納的に決まるのが分かるであろう。
 
メロディ、リズム、強弱、音色、コードなど、音楽を構成する要素は数多い。それらの要素のうち、素数と対応させて考えるのが面白そうなのは「モチーフ」だと考えた。モチーフとは曲の顔となるフレーズのことである。ベートーヴェン『運命』の有名な「ダダダダーン」はまさにモチーフである。
 
曲のモチーフだけを取り出して考えよう。リズムやコードを一旦無視すれば、先に説明した度数表示だけが残る*3。特に曲に用いる音を低い方からドレミファソラシドレの9音に限れば、桁上がりを気にせず十進法の自然数と読むことができる*4。逆に、自然数を桁ごとに取り出して、度数を表す数列と見做すこともできる。これにリズムやコードを「作曲」によって与えれば、自然数は音楽になる。これは半分はアルゴリズムであり、半分は創造行為であると言えよう。
 
この「音楽への写像」はどんな自然数に対しても行うことができるが、僕たちの関心は素数であるため、写像の定義域は素数の集合とするのが望ましい。これが素数作曲である。
 
素数を覚えるテクニックとしては語呂素数が有名であるが、これは素数から日本語への写像と言える。語呂合わせをすると暗記がし易くなるのを僕たちは経験的に知っている。その理由は明確には言えないが、きっと言語能力と記憶能力は密接に繋がっているのだろう。一方、人間の音楽能力も記憶能力と密接に繋がっているに相違ない。覚えようとしていない歌を覚えていることや、数回聞き齧った曲が頭の中で鳴り続ける「脳内再生」の経験は誰にでもあるだろう。言語能力と同じように、人間には音楽能力が予め備わっている。この音楽能力を素数暗記に応用することが僕の悲願である。
 
2866998244xは四つ子素数である。僕はもりしーとの素数大富豪でこの覚えにくい素数を出し、「この素数は何だ」と驚かれたことがある。これは僕が去年の秋頃に素数作曲し、今年の秋頃の素数大富豪で突然「鳴った」素数である*5素数作曲の実用化は可能である。それは、11桁もあり絵札も絡まず語呂合わせもできない地獄の素数に、きっと鳴るだろう。
 
限られた時間、踊り出す手指、思考に割り込む雑音。無粋な文章になる前に筆を折らねばならない。この文章は本来なら音楽であるべきだったのだ。しかし僕たちは具体例を素描しておきたかった。僕たちは十進法で素数の名を叫ぶ。エピソード記憶がいい。素数そのものは個性を持つことを勿体ぶるけれど、素数の名は音楽に繋がっていける。それは玄関になる。同じ曲を繰り返し聴く。僕たちは何度でも素数に出会い直せる。
 

 

これを読んで下さった皆様、ありがとうございました。

この記事は素数大富豪 Advent Calendar 2022 - Adventarの4日目の記事です。昨日はもりしーさんの記事

prm9973.hatenablog.com

でした。素数作曲はあまり理解されていないようなのであえて被せました。もりしーさんに僕が素数作曲の先駆者と恐れ多くも紹介されましたが、エピソードを読んでくださればわかるように先駆者はもりしーさんです。本家を差し置くことはできない。

明日はnishimura(@icqk3)さんの「花子しばく問題に関係する話題」です。よろしくお願いします。

*1:もりしーと素数大富豪をしているときにその話を聞き、ピアノを弾いて確認した。僕はもりしーとシェアハウスで同居していた。

*2:ドとドは距離がゼロなのだから度数はゼロとするのが自然と思われるかもしれないが、そのような定義ではない。

*3:リズムやコードを無視するという操作は作曲の逆とも言えるので、「脱作曲」とでも名付けられるのではないか。

*4:エピソードとして8121086131210xを例に挙げたが、これは桁上がりを考える場合である。すなわち、数列(8,12,10,8,6,13,12,10)をドソミドララソミと見做す。このように桁上がりを考えると二通り以上の解釈があるため、逆の操作を一意に定めることができなくなる。

*5:https://twitter.com/kynameq/status/1449708211452329989?s=46&t=VlQ-gNqBGUPXkXlOjDRmdw